2020/08/30 13:24
しげさん
『イケてる! 農業者さん数珠つなぎ』第3回 長尾農園 長尾善裕さん
最初におことわり…
今回の記事、集合体恐怖症の方はもしかすると【閲覧注意】の画像があるかもしれません。
悪しからず!
これ、なんの花だかわかりますか?
白い花
赤い花
そして、1枚数百万円で取引される黒い花(笑)
これらはすべて蓮の花。春から夏にかけて徳島県、特に鳴門方面を車で走っていると目にすることが多いですよね(黒い花は見かけませんが)。とてもきれいな光景ですが、観賞目的ではなく、これらは全部レンコン畑。早いものでは7月中旬くらいから収穫時期を迎えます。
みなさんご存じですか?
なんと徳島県はレンコンの国内出荷量2位を誇ります。ちなみに圧倒的1位は茨城県です…。
今回はレンコン王国徳島で、かなりこだわりを持った生産方法をされている、長尾農園の長尾善裕さんをピックアップしたいと思います。これを読み終えたらあなたもレンコン博士だ!
こだわり農業者さんが推薦する農業さん
長尾農園 虎太郎くん
長尾農園にお邪魔するとまずこの子が出迎えてくれます。めちゃくちゃ人懐っこくて、番犬の役目は放棄しています。
こんにちわ~!
長尾農園 長尾善裕さん(68)
長尾さんは就農歴46年の農業の大ベテラン。実家もレンコン農家だったそうなので実際はもっと農業歴は長いかもしれませんね。もともとは米作りなどもされていましたが、今はレンコン一筋で頑張っておられます。
そんな長尾さんとの出会いは昨年の12月。京都でレストランをされているシェフに徳島県のおすすめ食材とその生産地を案内する機会があり、私の尊敬する農業者さんに紹介してもらったのが、長尾さんでした。紹介してくれた農業者さん自身もこだわりがすごい人なんですが、その人に
「こだわりがすごい!」
「長尾さんのレンコンはびっくりするくらいおいしい」
と言わしめるほどの人。実際会ってお話を聞き、シェフとレンコンを試食させてもらったんですが、ホントおいしくて二人して感動。
今まで食べてたレンコンと全然違う!
さてさて、このシェフは京都の薬膳イタリア料理『LUDENS』のオーナーシェフ、田淵 章仁さん。
なんと、あのミシュランでビブグルマンに2014、2015年に選定されたこともあるシェフなんです! そんなシェフを感動させるってすごいレンコンですよね。本当ならこの夏にも徳島に来てレンコンやハスの実の収穫体験をされる予定でしたが、コロナ禍のため断念。来年こそはぜひ行きましょうね!
レンコン・レンコン・レンコン
さて、長尾さんにお話を聞くとレンコンについて知らなかったことばかり! さすがにしげファームではレンコン栽培はしていないですからね。
しげ:まず、最初にレンコンにも品種ってあるんですよね? 確かに花の色も白とか赤とかあるし、葉っぱの形や大きさにも違いがあるからそうなんだろうなぁとは薄々思っていましたが。
長尾さん:うちの農園でも今三種類のレンコンを栽培してますよ。品種としては、「オオジロ」「阿波白秀」「備中」。「オオジロ」と「阿波白秀」が早生品種で花が白いのが特徴。「備中」が昔から栽培されている品種で晩生。花は赤いです。
しげ:(しょっぱなから知らない名前ばっかりでワクワクしてきた!)そうなんですね! 「阿波白秀」は“阿波”って名前についているところをみると、徳島の伝統レンコンなんですか?
長尾さん:いやいや(笑)「阿波白秀」は2年前くらいから徳島県が奨励している新品種。徳島県農林水産総合技術支援センターが在来種の「ロータス」と「オオジロ」を交配させて開発しています。まだ、レンコンの出来が安定してない気がするね。
しげ:新品種だったんですね。てっきり在来伝統種かと思ってました。品種としての開発意図はなんなんでしょう?
長尾さん:台風時期より前に収穫できる早生品種であること、3節で75㎝、太さも均等なレンコンになる品種を目指しているようやね。
しげ:3節で75㎝。そんな規格があるんですね。知らなかったなぁ。味は作られている品種の中でどれが一番とかあるんでしょうか?
長尾さん:75㎝だとちょうど箱におさまりがいいんよ(笑)スーパーなどで販売するときはだいたい節ごとにカットして売ってるから、買う人にはどうでもいいことだけど。
味も形もダントツで「備中」。関西圏で人気のある太さと長さです。ただ収穫時期が台風時期なのでリスクはあるよね。それもあって「阿波白秀」が開発された感じかな。「オオジロ」は7月中旬から収穫できる、早生品種として重宝されるね。
しげ:たしかに買うときはひと節単位が多いですよね。レンコン好きとしては3節で売ってても全然オッケーな気もしますが。
あ、そういえばレンコンって毎年種を蒔いて栽培するんですか?
長尾さん:いやいや。植えつけ用に残しておいたレンコンの節を植えて育てます。ちょっと違うけど、サツマイモのつるを植えて栽培するのと感覚は似てるね。勝手に畑に落ちた種が発芽して育つ場合もあるけど、やっぱり生育はそんなに良くないね。
しげ:ありがとうございます。以前からの疑問が解決しました(笑)
しげ:レンコンを栽培される上でのこだわりポイントは?
長尾さん:化学肥料に極力頼らず、有機肥料で栽培することかな。うちの畑では、レンコンの植え付け前に一度だけ石灰窒素を入れるけど、基本それだけ。肥料は、魚粉を主として使用しています。
しげ:石灰窒素を施肥するのは、土壌の殺菌のためですか? あと、魚粉など有機にこだわられる理由は?
長尾さん:もちろんそれもあるけど、殺虫と除草効果も見越して。ジャンボタニシやザリガニを防除できるのが大きいね。除草もしておかないとアブラムシが発生しやすくなるので。
魚粉など有機肥料を使うようになったのは化学肥料を使っていた20年くらい前に畑の地力が落ちてきてレンコンに病症が出た時期があって…。それからいろいろ調べて有機、魚粉を使うようになったかなぁ。
しげ:そうなんですね。ジャンボタニシは水稲などでも被害が報告されているので理解できますが、ザリガニってレンコン栽培になにか問題あるんですか?
長尾さん:ザリガニは食べる目的なのかはわからんけど、レンコンの芽をハサミで挟んで切ったりしおるんよ。あと畔に巣を作って穴を開けることあるから。そこから溜めた水が抜けてしまうとアブラムシなどの害虫が発生する原因にもなる。
しげ:ザリガニ悪いやつですね(笑)それは駆除しないと。
最後に今後の目標は?
長尾さん:自分自身がそこそこの年齢だし、後継者もいないから(笑)今後も元気にこだわりを持ってレンコンを作っていくことかな。
しげ:ありがとうございました!
レンコン畑に到着すると、このキャタピラのマシーンに乗って畑を移動します。戦いの地に赴くようでテンションが上がる!
豆知識ですが、レンコンは収穫前にまず葉・茎を刈りとって、10日間くらい置くそうです。刈り取ってすぐ収穫するとレンコンが土壌の鉄分のせいで赤黒い場合があるそうで、10間くらい置くことによって、それがなくなり、白くなっていくそうですよ。レンコンは白さが命らしいので、必要なひと手間だとか。
うん、ほんとこの企画の取材勉強になるわぁ
そして、めっちゃ楽しい!
長尾農園のレンコンは、今まで食べていたレンコンと比べてまず歯切れよく食感抜群!そして甘い!煮物にするとホクホクでそれでいてシャクシャク。こだわり農業者さんやミシュランビブグルマンシェフが認めるのもわかる気がします!
番外編 ハスの実食べてみた!
前出の薬膳料理をされている田淵シェフが夏に来て収穫したいと言っていたのがコレ! 集合体恐怖症の人ごめんなさい!
ハスの実!
中国や東南アジアでは親しみのある食材で栄養価と食物繊維も豊富だとか。生でも食べることはできて、甘みのある味ですがなんとなく落花生ぽい味だったので、皮をむいて塩ゆでにしてみました。
めちゃウマ!
ホクホクで落花生と栗の中間みたいな感じで、花の実だからか香りもすごくいい!
長尾農園さんの許可をもらって道に面したハスの実を収穫させてもらいました。レンコン畑に入って勝手に取ったりは絶対しないでください。畑に入ると根であるレンコンが傷ついて売り物にならなくなってしまいますし、なにより不法侵入です。
ダメ!ゼッタイ!
次回もこだわりを持ったイケてる! 農業者さんをご紹介します。
お楽しみに!