2022/09/08 11:32
まっつん
ウクライナで何が起こり、今どうなっているのか 香港出身のカオルさんが写真展を開催
2022年2月24日。
ロシアによるウクライナ侵攻がはじまりました。
それから半年以上が経過しましたが、戦いはまだ続いています。
今何が起こっていて、人々がどうなっているのか?
侵攻がはじまる前に現地入りし、命がけの取材を行った香港人ジャーナリストのクレ・カオルさんがウクライナ現地リポート+写真展を徳島で行いました。
「決して他人事ではない」危険を承知で、真実を伝える取材を決意
今回の企画展は、9月7日(水)・8日(木)に徳島市の『シビックセンター』で開催されました。
現地で撮影した約3万枚の写真の中から、街の様子や兵士・市民の姿など77点をピックアップ。
手書きの説明書きとともにウクライナのリアルを伝えてくれました。
香港生まれのカオルさんは、元々バイオテクノロジーの研究をしていましたが、香港の民主化運動への参加がきっかけでフォトジャーナリストに転身。
2020年には独裁体制を強めるベラルーシにわたり、香港と同じように政府の弾圧に苦しむ人たちを長期取材しました。
そのような経験から、ロシアとウクライナの関係も早くから注目していたカオルさん。
さらにウクライナには友人たちもいたそうで、「ロシアによる侵攻が人ごととは思えない」と、現地の目線で状況を知らせる決心をしたそうです。
侵攻の数日前に現地入りし、2月24日未明キーウ近郊の友人宅で過ごしていたときに最初の攻撃を経験しました。
現地の人たちも、「本当に侵攻してくるとは」「まさか首都が攻撃されるなんて」と驚きの様子だったようで、翌日は西部へ逃ようとする人たちで道路が大渋滞。行く当てもなく、道で泣き崩れしまっている人も見かけたといいます。
その後カオルさんは自らの危険を承知で、ハルキウ、ドンバス、セベロドネツクなどに向かい、各地の状況を取材。
そのなかでは、ロシア軍から至近距離攻撃されたり、間一髪砲撃から逃れたりといった危険な経験もあり、7日(水)に行われたギャラリートークではそういった生々しい体験談も語られました。
こちらは小麦の種もみが保管されていた倉庫があった場所の写真。
砲撃によって倉庫はご覧のように全焼し、その火は約数週間にわたって燃え続けたそうです。
食料倉庫や食品店が攻撃対象になるケースも少なくはなく、市民が食べ物に困っているとのこと。
今回の侵攻では旧ソ連時代の兵器も使われていて、このように着弾後爆発せず刺さったままになった不発弾も残されているそうです。また、道路には地雷が設置されているエリアもあり、あたりが暗くなった夜間の移動中に誤って爆発に巻き込まれてしまう人たちもあとを絶たなかったとか。
ウクライナの人たちと今
カオルさんの写真の多くは、市民の人たちの姿です。
自分たちの街の文化を守ろうと自主的に土嚢を積む市民。
命がけで軍のサポートをするため、「生きてまた会えるかわからない」と開戦の日に付き合いはじめたカップル。
そういった数多くの市民を対象とした取材のなかで、カオルさんが必ずする質問があります。
「平和か?勝利か? あなたはどちらをのぞみますか?」
そうすると全員が「勝利」と答えたと言います。
数百年もの間、ロシアをはじめとする近隣国の支配を受けていたウクライナ。
だからこそ、自分たちの文化や言葉に誇りを持ち、命がけでも自国や自由を守りたいと思う人たちが多いのだと教えてくれました。
こちらのケガ人は、腕を骨折しているにもかかわらず、ウクライナの勝利を願い高らかに腕を掲げています。
その姿から、強い決意が伺えるような気がします。
武力によって平和を成し遂げることが100%正しいとは思えないが、武器を手にとらないと守れないものがある。
「本当に難しい問題」とカオルさん。
一国も早く平穏に暮らせる日々が訪れることを願い、自身にできる「伝える」活動を今後も行っていく決意です。
現地ではロシアによる支配地域を奪還しようという機運が高まっているそうで、9月23日には再びウクライナ入りし、その様子も取材する予定とのことでした。
私たちにできることは決して多くありませんが、平和について考える人がより多くなれば
未来に向けて前進していけるかもしれません。
そのためには、まず「知る」ということが大切なのだと気づかされたイベントとになりました。