2023/08/30 12:00
あわわ編集部
【神山まるごと高専】モノづくり・起業を目指す人を育成!/魅力・求める人材・入試・学費・学生へのインタビュー
2023年4月からは新校舎・寮に一期生を迎え入れ、「テクノロジー × デザイン×起業家精神」を教育の土台としながら、「モノをつくる力で、コトを起こす人」の育成を目指している『神山まるごと高専』。事務局長に話を伺い、気になる高専の魅力や、求める人材、入試方法などに迫りました。
神山まるごと高専
事務局長 松坂 孝紀さん
高専5年間の教育システムについて
「高専というと高校と比較されがちなんですが、どちらかというとちょっと早く入れる大学だというふうに思っていただいた方が良いと思います。文科省のカテゴリーの中でも中学と高校が同じ“中等教育機関”というところですが、高専は中等教育ではありません。大学と同じ“高等教育機関”のカテゴリーになっています。なので、制服や校則のような学習指導要領を設けず、かなり自由度の高い教育システムになっているというところが大きな特徴です」
求める人物像「モノをつくる力で、コトを起こす人」
「『神山まるごと高専』の特徴は、作り手が起業家を中心としたメンバーということです。
関わってくれる起業家に話を聞くことがあるのですが、「学校で学んでおいてよかったなって思うことはなんですか?」と質問すると「あれは役立ったな」という話はなかなか出てこない。一方で、「こんなことを学んでおきたかったのでは?」と我が校で学べるような項目を提示すると、そうだという声も多い。ここに今の日本の教育の問題点があるのではと私たちは考えます。
我が校の求める人物像として「モノをつくる力で、コトを起こす人。」という表現にしています。高専というとロボコンなどものづくりの力を育む学校のイメージがありますし、実情としてものづくり産業には高専出身者が多い。ただ、ものづくりができる人だからこそ、さらにもう一歩進めて“コト”を起こしていく力を付けていくことによって、新しい高専のカタチを見ることができ、日本の社会にはこういう人こそ必要なのではと私は思っています。
これまでの教育システムを変え、これからの新しい時代に合う新しい教育をするというものを作れないだろうか…そんな思いでその学校をつくっています」
15歳から、テクノロジーとデザイン、起業家精神を一度に学ぶ
「“テクノロジー”は主にAIやプログラミングなど、特に「情報工学」と言われる部分を指しています。
ものづくりは、どんどんハードルが下がっていくものだと私たちは考えています。たとえば、昔は映像一本作るのも専門的でしたが、今ではスマホが一台とアプリを使えばだれでも簡単に映像を作成することができますし、生成AIやChatGPTをはじめとしたテクノロジーがどんどん発達すると、クリエイティブも簡単になっていく。
ハードウエアのものさえ、3Dプリンターがもっと普及していけば簡単に作れてしまう。そういった時代の中で残っていくものとは何かと考えると、一つは“デザイン”です。
テクノロジーとデザインによって打破しようとする考え方と、“起業家精神”という3つを掛け合わせることによって、新しい時代にあう人たちを育てていきたいという思いがあることが非常に大きな特徴になります。
キャリアパス
「卒業後のキャリアパスも非常に特徴的です。
一般的に、高専卒業すると就職率はとても高く、だいたい一人当たり20社程度求人があると言われています。さらに専門的に学びたいと思った場合、大学3年生に編入できます。就職、大学編入のほか、私たちが力強く推進して行きたいと思っているのが起業です。学校は出口戦略がとても重要なのですが、起業を実現するという出口自体を学生自身が作ることができる。 起業がすべてだと思いませんが、一つの選択肢として「自分が起業すること」がごく自然に考えとしてある、そんな学生に育ってほしいと考えています」
寮「HOME」と校舎「OFFICE」
ライブラリー
美術室
「仲間とともに暮らし学ぶことで、感性や絆、心を育んでほしいという思いから、寮の名称は「HOME」としています。HOMEは、神山町から譲り受けたRC造4階建ての旧神山中学校をリノベーションした建物です。」
「校舎「OFFICE」は、神山町の景観に馴染むよう平屋の木造校舎としました。神山町産の約4,000本の杉を使用しており、木の香りをすごく感じる空間になっています。
校舎内には200名が収容できる「大講義室」、研究・制作ができる2つの「β(ベータ)ラボ」、日々の授業を行う5つの「講義室」、そしてワークショップも可能な「演習室」、教員スタッフが活用する「研究室」などがあります。
もともと棚田だった場所でしたので、高低差を利用することにより研究室と学生が使うラボスペースには豊かな空間が生まれ、コミュニケーションが取りやすい環境を実現しています」
支援企業について
「構想発表を2019年に行い、日本を代表する企業の方々に協力をいただきながらカリキュラムやカルチャーを少しずつ作っていきました。現在、毎週水曜日に2人ずつ、起業家をお呼びし、起業家講師として来ていただいています。
開校には、最低21億円が必要だったのですが、それを超える27億円を様々な企業様からのご支援いただきました。地元の企業様にも多くのご支援をいただき、うれしく思いました。」
給付型奨学金
「大きな特徴だったのが学費無償の学校ということ。本来、田舎で校舎を新設し、少人数に充実した教育を行うことは非効率です。学費が高くなってしまうのは必然ですが、我々は富裕層の選択肢としてこの学校を作りたかったわけではありません。そこでポイントとなるのが給付型の奨学金という仕組みです。
最終的には11社の企業様からご参加いただいきご支援いただくことによって実質無償化というものを実現することができました。
家庭環境がそれぞれ異なった人材が集まる、いわゆるダイバーシティ(多様性)ということが、学校としてひとつの魅力に繋がっていると感じています。
一期生の受験に関して
「入試には全国から受験生を募ることができ、一期生の倍率は約9倍でした。
北は北海道と思いきや、イギリスロンドン、南は沖縄から学生が集まりました。私たちは学力だけで選択しません。私の求める学生像には以下のようなことが問われます。「するか・しないか」「ものづくりに興味・関心があるか」「多様な価値観を受け入れ自分の意見を伝えられるか」といったことです。
既存の学校が評価していた偏差値といった、絶対的に君臨していたものから見逃してしまっている個性を見出したいと考えています。
一期生がどんな入試だったのかというと、
①高専でつくりたいモノをプロトタイプでつくり、90秒の動画で紹介してください。
②自分が将来起こしたいコトを800字以内の作文でまとめてください。
③あなたが神山町に商店をつくるならどのような商店をつくるかA4用紙1枚で表現してください。
という内容です。
地元の食材を取り入れた給食は学生に好評なのだとか。
一期生の学生にインタビュー
●一期生 Aさん
「やりたいことを見つけるために入学しました。今はグラフィックの授業が楽しいです。休日は川で遊んだり、カフェに行ったり、県外にも遊びに行ったりします。ほかにもマルシェに出店、民泊でバイトなど、充実していて楽しいです!」
●一期生 Bさん
「ゲームづくりがしたくて入学しました。プログラミングに興味があり、サンプルコードをChatGPTに投げていろいろ試しています。神山町の良いところは、人との距離が近いところです。」
●一期生 Cさん
「デザインや起業に興味があり入学しました。SONYの十時さんの貴重な話を聞くことができました。学生時代の話はとても興味深かったです。部活はファーム部に所属しています。」
既存の枠に捕らわれない新しいカタチの学校『神山まるごと高専』。その魅力を知り、意欲的な学生さんにも出会うことができました。今後の学生たちの活躍にも目が離せません!