2022/03/16 11:24
みくりさん
【街ネタ/阿波甘蕉園(あわかんしょうえん・阿波市吉野町)】徳島でバナナ!?葉っぱで‟お茶”まで作ってしまうほどのバナナ愛
はい、やって参りました。『アウトドアが苦手過ぎる女』みくりさんです。
最近週末になると旦那が子どもを連れてキャンプへ行ってしまいます。山奥の秘境から鳴門の静かな海辺まで、徳島県内津々浦々。どうやらLINEのグループチャットでキャンプ友だちができたんだとか。アクティブなうえに社交性まであるとは…我が旦那ながら恐るべし。
ひと足踏み入れればそこは灼熱の南国リゾート!?
ハウス内に入ったとたん汗が噴き出してきそうなほどの暑さ。まさに南国そのものです。そんな中、生い茂るバナナの葉の奥から笑顔で出迎えてくれたのが『阿波甘蕉園』のオーナー・矢野忍さん。
現在ほぼ一人でこの大量のバナナの木を管理しているのだそう。ハウス内で育てられている品種は[アイスクリームバナナ]、[グロスミッシェル]、[スーパーミニバナナ]の3種類。そのほか、この暑さを利用して育てられないかと、ドラゴンフルーツの仲間の[イエロードラゴン]や、[ガックフルーツ]など南国植物を試験的に栽培しています。
矢野さん:割合としては[アイスクリームバナナ]が70%、[グロスミッシェル]25%、[スーパーミニバナナ]5%といったかたちです。うちは土や科学肥料を使わないことにこだわりがあったり、また照度不足、冬場夜間の温度不足の問題もあるため栽培が難しくて…毎日大変です。
みくりさん:徳島でもバナナは比較的簡単に栽培できるんでしょうか?
矢野さん:はい。あまり知られていませんが、県内にも個人的に小規模でバナナを栽培されている方はけっこういるんですよ。ちなみに『阿波甘蕉園』の‟甘蕉”は、バナナの和名です。
みくりさん:知らなかった!
矢野さんは元々は主婦をしていたそうですが、祖父母の営んでいた農業をやってみたいと一念発起。沖縄や岡山など、有名なバナナ農家さんを訪ね歩いて自己流で勉強を重ね、この地でバナナの生産を開始しました。最初は100株ほどの苗を岐阜県の『奥飛騨ファーム』から購入して始めたそうですが、失敗が多く苦労が絶えなかったそう。
矢野さん:種のないバナナは、茎の根っこの脇から出てくるイモ(新芽)を使って、次の代のバナナを育てます。これがけっこうなスピードでたくさん増えるので、最初の100株は少し買い過ぎでしたね。
苗同士の間隔を十分に空けないと、栄養の取り合いになってうまく育たなくなってしまうので、現在も定期的に間引きの作業が欠かせないそうです。ちなみに、ハウス内のバナナの木は5メートルほどですが、苗の状態から約1年でその高さまで成長し、実をつけるのだとか。取材にお伺いした3月はバナナにとってはオフシーズン。大きな葉っぱにもあまり元気がなく、実際に果実が実っているところを見ることはできませんでした。これだけ暑いのにオフシーズンとは…信じられません。さすがは南国フルーツの定番といったところでしょうか。
暑さの秘密は超大型の薪ストーブ。価格もすごい。
じつは、ハウス内の暑さの秘密はこちらの『スーパーゴロン太』くん。高さが約130センチほどあり、規格外の大きさを誇る‟燃焼強力薪ストーブ”です。お値段も聞いてびっくり。設置費込みで約150万円! このゴロン太くんでも、8アールの広さを誇るこちらのハウス内では力不足。本来であればあと2台は設置するのが理想的なのだとか。いったいバナナを栽培するためにはどれだけの温度が必要なのでしょう?
矢野さん:ハウスの中は常に13℃を切らないよう調整しています。
みくりさん:これは13℃どころの暑さではないと思うのですが…(滝汗)
矢野さん:夜だとこのゴロン太くんでも10℃を切ってしまうこともあるのでストーブの調整が大変なんですよ。深夜でも家から薪をくべに来たりして…。帰るのが面倒な時もあるので寝袋置いて寝れるようにもしてあるんです。
みくりさん:深夜にも!? 矢野さんがお休みできる日なんてあるんですか!?
矢野さん:2018年にバナナを栽培し始めてから休みは1日たりともないですね。利益もまったくといっていいほどありません。わたしもお給料なしで働いてますが、楽しいので気にしません☆
みくりさん:本当にバナナが好きなんですね…。
矢野さんのバナナ愛は凄まじく、家族もその熱意にほだされるかたちで応援してくれているそうです。最近では旦那さんが薪の確保に奔走してくれたり、お子さんたちも水やりを手伝ってくれたりするんだとか。
バナナの葉を使ったお茶や加工品も販売。
矢野さんいわく、「バナナの魅力は捨てるところがないところ」だそう。
事実、こちらではバナナの葉を使った‟お茶”や‟わらじ”、飲食店にはそのまま‟つまもの”としても販売しているのだとか。中でも斬新なアイデアといえばお茶の葉としての利用。こちらは県内の藍茶専門店『こはる日和』さんの協力で実現したもので、[あ!和ばななの葉茶]というユニークな商品名で販売されています。
実際に飲んでみた感想ですが、香りはほのかに甘く柔らかさが感じられ、クセのまったくない優しい舌ごこち。どんな種類のスイーツにでも合いそうな、ほかでは味わったことのない新しいお茶の風味でした。こちらは3グラム5袋入りパックで1,200円。お買い求めは『小麦屋chant chant』や『阿波甘蕉園』の通販サイト、そのほか阿波市内のいろいろなお店にも置かれているので、見つけた人はぜひ一度試してみてください。
実は超高級品種ばかり。レアリティの高いバナナ。
こちらは成長が止まってしまったため、やむなく収穫した[グロスミッシェル]。ここから黄色く熟してくれるかどうかは矢野さんでも分からないんだそう。ちなみに県内で1本あたり600円で販売しても、飛ぶように売れてしまうのだとか。それもそのはず。関東など都会のスーパーでは倍以上の値段で販売されていることもある商品だそうです。
みくりさん:科学肥料を使わない点などを考えれば、もしかするとそれ以上の価値があるのでは!? いっそ都会に出荷して大儲け…なんて気持ちはないんですか?
矢野さん:できればいいんですけどね。バナナは黄色く熟してから1本づつ収穫するので「いつ、どれだけを送ってほしい」という注文に応えることができないので難しいんです。
でももしこの先、矢野さんの努力が実を結び生産が安定してくれば実現することも夢ではないかもしれません。徳島の新たな名産品としてバナナが加わる日が楽しみですね!
次回のバナナの販売は10月頃。県内の産直市『阿波食ミュージアム』、『JA夢市場』、『喜多野安心市』などで予定しています。InstagramやFacebookで随時販売情報を発信しているので気になる人はフォローしておきましょう!
阿波甘蕉園(あわかんしょうえん)
- 住所/徳島県 阿波市吉野町西条字大井 5-5
- 電話/090-7622-2699
- 営業時間/随時
- 定休日/不定休
- 駐車場/有