インタビューあわわ
2020/08/11 14:42
あわわ編集部

「徳島の今を語る」~わたしの好きな徳島まとめ④~


かつて港町として栄えた、太平洋に面する徳島市津田地区。現在はほとんどが埋め立てられて工場や会社がひしめくエリアになっているが、昭和中期ごろまでは長い砂浜とたくさんの松が自生する林が存在した。「子どものころは、よくここで遊びました。広い松林を抜けて、100メートルほど砂浜を駆けると海にたどり着くんです」と、目を細め懐かしそうに語る山田さん。「帰りには必ず松の葉を袋に集めて持って帰るんです。よく燃えるから、ご飯を炊くのにもってこい。ちなみに冬は津田山に遊びに行って、松の葉を拾っていました」。土地の開発により砂浜は完全になくなってしまったが、松の木は少しながら残っているエリアがある。数こそ減ってしまったが、どれも太く立派な幹を持ち、高く高く伸びている(樹齢は数百年といったところか)。「平成初期までは今ほど埋め立てられてはいなかったので、ここで盆踊りを踊ることもありました」と山田さん。踊りというのは、徳島がまだ阿波藩と呼ばれていたころからこの地区に伝わる“ 津田の盆踊り” のこと。海難事で亡くなった人々の魂を鎮める、精霊踊りとして生まれた盆踊りである。山田さんの亡き母・コユキさんはこの盆踊りの歌い手として名の知れた人で、山田さんも盆歌を歌い継いでいる。「昔は砂浜で踊っていましたが、だんだんなくなっていったので松の下で。テレビなどの取材を受けるときは、いつもここでしたね」。昔の写真を見れば、踊る人たちの向こうにたくさんの松が見える。すっかり様変わりしてしまった松林だが、きっと山田さんの目にはあのころの情景が思い浮かんでいるはず。津田の伝統とともにあった松林、少なくなった今の場所はぜひとも残してほしい。 


さまざまなイベントが行われる場として、県民に親しまれているしんまちボートウォーク周辺。特に行事のない晴れた日の夕方ともなれば、にぎやかなイベント時とは一変。ベンチに腰かけて読書する人、犬と一緒にゆったり散歩する人などがポツポツといて、それぞれのペースでこの場所を楽しむというピースフルな光景が広がる。「子どもができてからこの近くに住むようになり、15 ~ 16 時ごろにベビーカーを押してこの辺りを散歩するのが日課となりまし」とは田井良樹さん。妻の絵梨子さんに店番をお願いし、お子さんと一緒に川沿いをぐるっと一周巡っている。「春は近辺の桜がとてもきれいだった。のどかな時間を過ごしています」。また、良樹さんは一時期フランスに住んでいたことがあり、その経験から新町川とフランスのロワール川の雰囲気がよく似ていると話す。「フランスの西端の町にいたのですが、川から潮の匂いがしたりして。新町川周辺を訪れると、あの町の感じをよく思い出します」。


[金時豚]は飼育から出荷までを一貫して行う『アグリガーデン』だけで生産されるブランド豚で、「とにかく脂が甘く、おいしさは格別です」と渡邉さんは話す。脂甘さはエサによって変わるといい、こちらで与えているのは金時いもや米を中心とした飼料。一方、うま味成分の多さは飼育期間で決まる。一般的には150 日ほどで出荷することが多いが、『アグリガーデン』ではおよそ200 日飼育。時間をかけて育てることで、豊潤なうま味のある肉になるそうだ。また、豚にストレスがかかると肉の味にも影響があるので、飼育する環境は大事。『アグリガーデン』の豚舎は、走り回ったり穴を掘ったりできる、広々とした環境がそろっている。「実は『Watanabe’s』を立ち上げるまでの1 年間こちらで働いていたんです。のびのびとした環境や時間をかけて育てていることを知ると、このおいしさに納得です」。店頭ではメンチカツを販売している日もあり、「揚げ物も本当に絶品!」だそう。メンチカツのほか、注文があれば好きな部位でトンカツを揚げてくれ、渡邉さんはホームパーティーの際に買っていくこともあるそうだ。

《データ》
金時豚専門店 アグリガーデン
tel.088-696-2983
阿波市吉野町字西条西姥御前98-1
●営╱10:00~18:00(土・日は~17:00)
●休╱水曜
●P╱10台


県外から徳島へ帰ってきた時、特に北側から眉山をバックにした吉野川を目にすると「ああ、帰ってきたなあ」とほっとしたことはないだろうか。岡連長にとっても、この風景にはいろいろな思い出がたくさん詰まっているという。「小学生時代は遠足の定番スポット。野球部に所属していたからトレーニング場所としてもよく訪れました」。特にお気に入りだというスポットは、吉野川橋下。吉野川橋は戦後復興の緒についた時期に架けられ、当時の橋では日本一といわれていた。その吉野川橋と川の流れ、遠くに眉山を望む情景に「なんとも言えない哀愁があり、なぐさめてもらっています」と、胸の内を語ってくれた。ゆっくりしたいときは週に1 度は訪れて、ボーっと橋と川を眺めていることもあるそうだ。夕日が沈む時間帯のほか、秋にはススキが風に揺れる情景が広がり、どこかノスタルジックな雰囲気がただよう。


キャンピングカー生活で各地を周っていた岩崎さん夫婦が海陽町に訪れたのは約3 年前。その時に感じた人柄や空気感が気に入り、宍喰の久尾に夫婦で移住してきた。「よそ者の僕らを温かく迎え入れてくれた」のが、久尾集落の総代・蔭田八郎さんだ。久尾は、宍喰浦に背を向けて山道を登ること30 分強のところにある“ 宍喰の終点”。人口もたった16 人で、そのうちの半分近くが県外からの移住者だ。なんでこんな山奥へ来るんかいなとは思うけど、住みたいって言うてくれるんならなぁ。見守ることが役目やと思っとるけん」と、カラカラ笑う八郎さん。人々の心を解きほぐすかのようなビッグスマイルで、岩崎さんも「この笑顔が本当に好きなんです」と話す。久尾のライフライン『蔭田商店』の店主としての顔も持ち、八郎さんの手掛ける絶品の干物は海陽町で知らぬ者なし。今なお週に6 日漁港に赴き、仕入れた魚で干物作りをしているというバリバリの現役だ。また、知識の宝庫のような八郎さんは植物を見て今年の台風の数を当てるそう。しかもこの予報は50 年間外したことがなく、「気象庁より天気が当たる」との声も。久尾のレジェンド、ここにあり。

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