2021/08/17 14:56
まっつん
【街ネタ】いったいどんな味? 阿波晩茶と藍の驚きコラボ(上勝町・つるぎ町)
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突然ですがみなさん!
阿波晩茶ってご存じですか?
スーパーの飲料売場や自動販売機なんかでもよく見かけるようになったかと思うのですが、その名のとおり徳島生まれのお茶!
一般的なお茶と違い、収穫した茶葉を大釜で茹でてから発酵させるのが大きな特徴で、徳島県内では相生町や上勝町などで昔からつくられています。
その珍しい製法から、2021年3月には国の重要無形民俗文化財にも指定され、購入できるお店や楽しめるお店が徐々に増えてきています。
で、ここからが本題!
そんな阿波晩茶について、あわわ編集部宛てに生産者の方から気になる情報が寄せられました。
生産者さん
「藍を入れた晩茶を出したので、記事にしてもらませんか?」
まっつん
「藍の晩茶ですか? 愛を込めた晩茶ではなく? ジャパンブルーの藍?」
生産者さん
「はい、そうです。ぜひ味見に来てください!」
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染物にすると美しい色を出す藍ですが、晩茶の色合いと混ざるとどうなるのか?
そもそも
「藍に味はあるんか?」(某おかみさん風ボイス)
気になり過ぎたので、連絡をくれた生産者・松下さんの待つ上勝町へ急行しました。
味見に向かったら、想像以上のアドベン茶(チャ)~
指定された場所は、一面の茶畑ではなく上勝町内の『月ヶ谷温泉』の前でした。ひょっとしてこちらでお目当てのお茶にたどりつけるのか? そんなこと考えながらしばらくあたりを見渡すと一台の車を発見。恐る恐る近づいてみると、「あわわさんですか?」と電話口の声の主が登場。
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『ファーム松下』の松下さん。
まっつん
お世話になります!今回は連絡ありがとうございました。早速ですか、お茶はどちらに?
生産者の松下さん
遠いところありがとうございます。それを電話でも説明しようと思ったのですが、なにせここから山道を500m以上は登りますし、大自然のなかなもんで目印もお伝えしづらいんですよ。なので直接ご説明できればと思って!
まっつん
山登り⁉ 茶畑に行くのでは?
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当初イメージしていた茶畑
松下さん
お茶というと、やはり手入れのゆき届いた平地の茶畑でお茶摘みのイメージがありますよね。もちろん上勝町でも平地でお茶を栽培されている方はいらっしゃいますが、山間部や傾斜地で昔ながらの栽培をされているという農家さんが多いように思います。見ていただいた方が早いと思うので、出発しますね!
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「500mと聞いて、まだなんとかなりそう」と思ったら甘かったんです。
かろうじて道幅は確保されているものの、結構な急勾配+一面の深緑。
しかも、すぐ側はガードレール無しの崖っぷち(焦)
インディージョーンズのテーマが聞こえてきそう。
お茶の味見にきたつもりが、いきなり大冒険のはじまりです!
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「松下さんお願いだから、ゆっくり」
阿波晩茶づくりは想像以上に大変だった!
車を走らせること約10分
ようやく松下さんの茶畑に到着!
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「うひょ~、さっきまで走っていた県道があんなに小さい」
びっくりしている自分をよそにあるポイントを指し示す松下さん。
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そうこれがお茶の葉っぱです!
松下さん
まだ少し若い葉っぱなんで、もう少しここから緑色が深くなったら収穫時期です。この周辺だと7月上旬にお茶摘みがはじまり、加工と平行して8月末頃まで続きます。ちなみにお盆頃になると白いキレイな花が咲き、それが秋には実になって種ができます。
まっつん
こんなに山のうえにあったら、お世話が大変じゃないですか?少し足を滑らせたら転げ落ちてしまいそう。
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松下さん
今住んでいる場所はもっと上の方ですし、自宅よりも高い位置に茶畑もあるので、このくらいの高さではあまり苦に感じたことはありませんよ(笑)それにお茶は地中深くに根をはる植物なので、ある程度大きくなると水やりをしなくても地中の水分を取り入れて育ってくれるんです。ただ、柔らかい新芽はシカに狙われることがあるので、そこには対策が必要ですね。
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そんな説明を受けている最中も、何度か転びそうになる僕。初見ではちょっとした屋外アクティビティーのように感じます。
まっつん
収穫はどのように行っているのですか?
松下さん
すべて手作業ですね。手袋をしてお茶の葉を支えるような下から手をまわし、一気に手前に引き戻すイメージで摘み取っていきます。力のいる作業で、その証拠に一般的な軍手だと約2日で破れてしまうんですよ。
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まっつん
そんなに力の入る作業なんですね! 知りませんでした。1日にどれくらいの量が収穫できるんですか?
松下さん
はじめて挑戦する人だと、10kg摘み取れば良い方ですね。プロだと20kgくらいだと思います。
まっつん
そのあとの工程は、どのように進めていくんですか?
松下さん
収穫したお茶の葉を沸騰したお湯で茹でます。一般的なお茶の場合は蒸すことがほとんどなので、ここが阿波晩茶の大きな特徴の一つですね。茹で上がったら摺り機を使ってお茶の葉を摺り潰します。お茶の葉は表面がツルツルしているので、実は葉っぱに傷をつけておかないとおいしい味にならないんです。そしてもうひとつ大事な作業が発酵。阿波晩茶の二つ目の大きな特徴で、摺ったお茶の葉を樽にびっしり詰めて熟成させます。平均では2週間程度ですが、うちは1カ月間熟成させるんですよ。お茶の葉を茹でたり、すり潰したりしていたのも実は発酵を促進させるための作業なんですよね。あと、樽に詰めるときにしっかり空気が抜けていないと、味が良くなりませんし発酵させている途中でお茶の葉が傷んでしまうことが多くなります。そうならないために石でおもしをして入念に空気を抜くことはもちろん、抗菌作用が期待できるバショウしゃシュロの葉っぱで樽にフタをします。それらの葉っぱはこの山に自生していて、まわりにあるものを上手に活用する先人の知恵ですね。
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茶葉を茹でるときに使用している昔ながらの大釜。
松下さん
発酵が終わったら、今度は天日干しを行います。カラカラに乾くまでには3~4日の時間がかかるので、その間とおり雨や湿気にさらされないように注意します。毎日天気予報とにらめっこですね(笑)また表面の茶葉から乾燥していくので、まんべんなく乾燥するように道具を使ってほぐしていきます。太陽が出てからのスタートでは乾燥に時間がかかってしまうので、朝4時から準備をしてなるべく早く出荷できるように努力しています。今では室内乾燥でしている農家も増えましたが、うちでは天日干しのみにこだわっています。
まっつん
なるほど! そうしてあの乾燥茶葉が完成するわけですね。
松下さん
実はもうひと工程あるんです。乾燥した茶葉を袋に入れて寝かせるんですよ。農家さんによってマチマチですが、うちでは10日から1週間以上寝かせます。そうやって熟成させることで、より爽やかでマイルドな味わいに仕上がるんです。
まっつん
そんなに手間と時間がかかるんですね。まるで子育てのよう。松下さんはずっと阿波晩茶を作られているのんですか?
松下さん
実は本格的にはじめたのは5年くらい前から。脱サラしてはじめたんです。元々両親がお米やお茶の葉を作っていたのでその作業を長年手伝ってはいたのですが、根気も労力もいる作業ですし生産者世代の高齢化も進んでいたので、なんとか阿波晩茶の文化を残すために力になれないかと思い一念発起しました。前職では営業をしていたのですが、そのときの経験が商品の販路拡大やブランディングに活かされているように思います。
気になる藍晩茶のお味とは?
さらに車を走らせること約10分。松下さんの自宅兼製造所に到着しました。
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念願のティータイムに突入!
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まずいただいたのは松下さんが生産している通常の阿波晩茶。
晩茶というと苦みや渋みがありますがこちらにはそれがなく、さわやかな香りがしてとても飲みやすい。松下さんによるとこの香りは乳酸発酵によるもので、阿波晩茶ならではの特徴ということです。色は少し薄目ですが、しっかり味がたっていて、あっという間に飲み干してしまいました。
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続いていただいたのがこちらの一杯。
一見緑茶のようですが、実はこちらは食用の藍パウダーをお湯で溶かした藍茶なんです。
藍というと、藍染のような鮮やかな藍色を想像してしまいますが、それは葉が傷ついたり、枯れたりするときに発生する酸化反応によるもので、藍の原材料となるタデアイは緑色をしています。この藍茶もその生葉を加工したものなので、このような色になるのだとか。
藍茶ははじめていただいたのですが、さきほどの阿波晩茶よりもフレッシュな味わいで、ハーブティーのような感覚で楽しめました。
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そしていよいよ両者がコラボした、藍晩茶が登場!
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気になるお味ですが、まさに両者の良いとこどりといった感じ。
さきほどいただいた藍茶よりも、より日本茶に近いような味わになっているのですが、後味がとてもまろやかで、夏場でも温かいお茶で楽しめそう。松下さんによると水だしもおいしくいただけるそうなので、そちらも今後試してみたいところです。
また、嬉しいことに藍に血糖値や体脂肪、血液中の体脂肪を下げる成分が含まれているほか、阿波晩茶じたいも乳酸菌発酵によって整腸作用や抗アレルギー効果が期待でき、飲み続けることで健康にも良いというメリットも!
おいしいし健康にも良い
藍晩茶恐るべし!
世界農業遺産認定の急傾斜地農法で育てられる伝統的な阿波藍
おいしい藍晩茶をごちそうしてくれた松下さん。
しばらくご自宅でまったりしていると、興味深いお話を聞かせてくれました。
まっつん
すっかりごちそうになりました。藍晩茶想像以上のおいしさでした!
松下さん
ありがとうございます。そういっていただけるとがんばって開発した甲斐がありました。お茶に何かを混ぜることじたいはじめての経験だったので、何度も何度も試行錯誤を繰り返したんですよ。今回のコラボのお声かけをいただき、藍パウダーを渡してくれた『家賀再生プロジェクト』の栃谷さんにも何度も試していただいてようやくこの味になったんです。
まっつん
なるほど! ということは藍晩茶の仕掛け人はもう一人いらっしゃるということですね!
松下さん
はい、そうなんです! 世界農業遺産に認定された急傾斜地農法でカラダに優しい藍を育てられています。面白いお話がたくさん伺えると思いますよ!
ということで、早速アポイントをとり、藍を育てている栃谷さんにお話しをお伺いしました。
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つるぎ町で藍を育てている『家賀再生プロジェクト』の栃谷さん。
まっつん
『ファーム松下』さんで藍晩茶を試飲しました。とてもおいしかったです。
栃谷さん
ありがとうございます! 私も発売前に何度も試飲させていただいて、あの仕上がりに感動しています。さらに藍の可能性が広がり、生産者としては嬉しい限りです。
まっつん
栃谷さんはいつから藍を作られているんですか?
栃谷さん
3年前からですね。現在藍を栽培しているつるぎ町家賀(けか)地区は、亡くなった主人のふるさとでした。結婚してから年に何度か訪れる機会があったのですが、以前は100軒ほどあった集落がいまは40軒ほど。どんどん過疎化が進んでいる状況でした。さらに大正以前は藍を栽培する農家が多かったそうなのですが、インドから染料が入ってくるようになってから徐々のその数が減り、存続の危機に瀕していました。経験はなかったのですが、そういった状況を知り居ても立ってもいられなくなったといいますか。ちょうどその年、つるぎ町を含む県西部の傾斜地農耕システムが世界農業遺産に認定されたタイミングだったので、「家賀ににぎわいを取り戻すなら今」と思い再生プロジェクトに参加することになったんです。
まっつん
ゼロからのスタートということで、大変なことが多かったのでは?
栃谷さん
昔ながらの栽培方法にこだわりたかったので、集落で暮らすかつて藍栽培に携わっていた方にたくさんお話を伺いました。そうしたら1年目から良質な藍を育てることができ、こちらも驚いています。現代的な方法で藍を育てると化学肥料や農薬が絶対必要になるのですが、先陣の教えどおりやると無農薬かつ化学肥料を一切与えずとも問題ありませんでした。土に茅(かや)をしくのですがこれが天然の肥料になるほか、不思議なことに虫もよってこなくなるんです。また、「水やりが大変だな」と思っていたのですが、標高500~600mの家賀地区は頻繁に上昇気流が発生。大気が不安定になって雨が降ることはもちろん、寒暖差による霧や夜つゆも多く、水やりをしなくてもどんどん藍が成長していきました。嘘みたいな本当の話しなんですよ!
まっつん
松下さんのところでも同じ話しになったのですが、やはり先陣の知恵というものは目からウロコですね。ちなみに今回のコラボは栃谷さんからのお声かけと聞きましたがどのような経緯だったのでしょうか?
栃谷さん
化学肥料も農薬も一切使用していない安全な藍なので、染物だけではもったいないなと思っていたんです。その流れで料理への利用を思いつき、収穫した藍を業者さんに頼んで使いやすいパウダーに状にしてもらいました。松下さんとは以前、上勝町の伝統農法の視察をした際に巡り合い、その後なんどかイベントでご一緒する機会がありました。同じように無農薬栽培にこだわられている方だったので、藍パウダーを見本でお渡しして、共同商品開発の話しをもちかけたんです。
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栃谷さんが中心となって生み出した藍パウダー[家賀(けか)の藍粉(あいこ)]。
まっつん
そんな経緯があったんですね。料理に使うということは、お茶以外の展開もあるんですか?
栃谷さん
『貞光ゆうゆう館』さんで藍パウダー入りのジェラートを販売しているほか、つるぎ町の『柴田米穀』さんで藍だんご、半田そうめんの製造で有名な『倭麺工房』さんには藍入りのそうめんも作ってもらいました。今現在もさまざまなお店にコラボを打診していて、今後ますます楽しめる場所が増えていきそうですので、しばしおまちください(笑)
まっつん
はい。とっても楽しみです!
藍晩茶が購入できる場所
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最後になりましたが、肝心の藍晩茶が購入できる場所について!
現在は以下のようになっているようです。
●月ヶ谷温泉 月の宿
●いっきゅう茶屋
●ふれあいの里さかもと
●ひなの里かつうら
●みはらしの丘 あいさい広場
●フラワーガーデンミモザ
●雑貨店Bancdoux
●喜多野安心市
●総合美容サロン フローラ
お値段はティーバッグタイプが800円、パウダータイプが1,300円です。
伝統農法で作られる藍と阿波晩茶。口当たりが良く、普段あまりお茶を飲まないという人にも楽しんでもらえる味わいに仕上がっておりますので、おみかけした際はぜひ手にとってみてください!