2025/05/02 12:30
まちの人事部

【開催レポート】大阪・関西万博「テーマ事業プロデューサー」小山薫堂氏 招聘講演会「いのちをつむぐ」
待ちに待った、「大阪・関西万博」が開幕しました!

提供:2025年日本国際博覧会協会
実は徳島県が大阪・関西万博に出展していることをご存じでしたか?
はじめに
関西広域連合が「いのち輝く関西・悠久の歴史と現在」をテーマに出展する「関西パビリオン」に「藍・阿波和紙・阿波指物」を施した「徳島県ゾーン」が登場!

関西パビリオン徳島県ゾーン。サステナブルが息づく徳島発のライフスタイルや先駆的な未来技術、魅力ある観光・食・文化を世界に向けてPRします(提供:徳島県)

また、4月30日から5月3日には、「EXPOメッセ」で徳島の“文化と食”を体感できる「阿波の国とくしま つむぐCAFE」が開催されるとともに、5月2日、3日は万博会場全体を多様な“踊りの輪”に観客を巻き込む「阿波おどり」が披露されます。
さらに、10月には徳島の若者たちによるプレゼン大会「VISION MASHUP STAGE~私たちが握る2050年の未来設計図~supported by Tokushima」も開催される予定です。
プレゼン大会の詳細はこちら↓
VISION MASHUP STAGE~私たちが握る2050年の未来設計図~
本企画は、「徳島の未来を担う若者」が万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」の思いや理念を受け継ぎ、未来に向けた自らの考えやアイデアをプレゼンする大会で、大阪・関西万博「テーマ事業プロデューサー」を務める福岡伸一氏、中島さち子氏、小山薫堂氏に「スペシャルナビゲーター」として参画いただきます。

▲左から福岡伸一氏、中島さち子氏、小山薫堂氏
登壇者は、「スペシャルナビゲーター」の万博での担当テーマである「いのちを知る」「いのちを高める」「いのちをつむぐ」から1つのテーマを選択し、そのテーマに沿って、2050年に「いのち輝く未来社会」を実現するための必要なアイデアやその過程(=設計図)について提案することとなっています。
「スペシャルナビゲーター」招聘講演会
このプレゼン大会に向けた企画として「スペシャルナビゲーター」3名を徳島にお招きした講演会を開催しており、今年2月に第3弾として小山薫堂氏の講演会を徳島市で開催しました。
前回の若宮さんに続き、参加できなかった皆さんに向けて、当日の様子の様子をご紹介します。
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幅広い場所で活躍する放送作家の小山薫堂さん
大阪・関西万博のシグネチャーパビリオン「EARTH MART」のプロデューサーを務める小山薫堂さんの本業は放送作家。『料理の鉄人』を始めとする数多くの番組の企画・構成を手がけています。脚本家としても活躍し、初の映画脚本となる『おくりびと』では、数多くの映画賞を受賞しています。他にも、雑誌の連載、ラジオのパーソナリティなど、様々なメディアでご活躍しています。
その活動はメディア業界のみにとどまらず、文化庁の日本遺産審査委員会でアドバイザーを務めるほか、京都芸術大学の副学長、料亭『下鴨茶寮』主人など、要職を歴任。さらに、熊本県地域プロジェクトアドバイザーも務め、くまモンの生みの親でもあります。
仕事とは、誰かを幸せにすること

小山さんが、仕事を選ぶときに大切にしている3つのことがあると言います。それは「その仕事は新しいか」「その仕事は自分にとって楽しいか」「その仕事は誰を幸せにするのか」ということです。特に、最後の「その仕事は誰を幸せにするのか」は、企画を考えるときに常に中心に置いて考えることだと言います。
そんな小山さんが代表取締役社長を務める企画の会社「オレンジ・アンド・パートナーズ」が掲げる社是は「世の利をつくる愛でありたい」。この社是は、戦後の日本を代表する作家である池波正太郎氏のとある習慣が由来になっています。
池波氏は、タクシーに乗るたびに運転手に100円のチップを渡していました。すると、どんなに機嫌の悪い運転手さんでも笑顔になります。そして、次に乗ってきた人に良い接客をし、お客さんも笑顔になる。そんな風に、自分が渡した100円によって笑顔を広げたいという粋な計らいがあったのだそう。その美学への共感から生まれた社是が「世の利をつくる愛でありたい」でした。
未来社会に必要なのは、慮る力
仕事を通して多くの人の幸せを生み出してきた小山さんが考える、未来社会に最も必要なこと。それは、「慮る(おもんぱかる)」力だと言います。慮るとは、相手のことを、よく考え、思いやること。
この「慮り」こそが、すべての企画の原点であると小山さんは言いました。小山さんの会社では社員のバースデープレゼントを企画の修業の場とし、全社員それぞれ異なるバースデープレゼントを社員が一つになって贈っているのだそう。お客さんにする提案も、身近な同僚を喜ばせるアイデアも、同じ“企画”。その根底には、何をしたら相手が喜んでくれるのか、しっかり観察し、考える愛情が求められます。
幸せとは探すものではなく、気づくこと
小山さんが関わった仕事で馴染み深いのは「くまモン」ではないでしょうか。もともとは、熊本県の地域振興キャンペーン「くまもとサプライズ」で生まれたキャラクターでした。これは、観光客が熊本に来て驚いたことを地元にも知ってもらうことで、地域の人にも改めてその良さを知ってもらうための観光キャンペーンです。このサプライズを象徴するびっくり顔のキャラクターが「くまモン」だったのです。
ライセンスフリーで様々なブランドとコラボを重ね、たちまち有名になったくまモン。しかし、くまモンがもたらしたものは経済効果だけではなかったと小山さんは言います。くまモンが、県民が身近にある幸せを感じる拠り所にもなっていったのです。そんなくまモンの肩書きは、「熊本県の営業部⻑兼しあわせ部⻑」。
それでも、困難は訪れました。2016年の熊本大震災です。そこで、私たちが幸せであることは当たり前ではなかったことに改めて気付かされたと小山さんは言います。それでもくまモンは、県民の幸せを支え、灯台のようになりみんなを励まし、くまモンがいることで、県民たちは足元にある幸せに再び目を向けることができたと言います。
ここで一つ、小山さんが大切にしている言葉の紹介がありました。芸術家・北大路魯山人氏の「坐辺師友」という言葉。これは、自分の身の回りが友であり師であるから、成長するためには良いものに囲まれることが必要だ、と述べたものです。小山さんはこの言葉を、自分の周りにあるものを先生や友人と捉えることで「周りにいる人から常に何かを学ぼうという視点が人生にとって大切である」と意味付けていると教えてくださいました。
くまモンと、北大路魯山人氏、二人のエピソードに共通することは、学びや幸せは、自ら“気づく”必要があるということ。学びも幸せも、すでに身の回りにあって、私たちは視点を変えることでそれに気づくことができるのです。
何気ない日常にも、師や友から得られる言葉がたくさん潜んでいます。そのことに”気づく”ことで、人生はより豊かなものになる。そして、そんな“気づき”を提供する場が、大阪・関西万博であると小山さんは言います。

食といのちを結ぶ「EARTH MART(アースマート)」
小山さんが万博のパビリオンのプロデュースの依頼を受け、「いのち輝く未来社会のデザイン」を考えたとき、 “食”をテーマにしたいと思い浮かんだそう。そして生まれたのが、「いのちをつむぐ」をテーマにしたパビリオン「EARTH MART」。人間が命を紡ぐために、どれくらいの“いのち”をいただいているのかを考える企画です。
「スーパーマーケットに行くと、ワクワクしますよね。そんなワクワク感を持って訪れてほしいと思い、架空のスーパーマーケットを舞台にしました。ただ、一般的なスーパーマーケットでは、売られている食材一つひとつがもともとは生きていたこと、いのちであることは感じにくいですよね。私たちが食べているものの根底には、いのちがある。EARTH MARTでは、このことに気づいてもらいたいと思っています。そして、これから皆さんがスーパーマーケットに行くときにも“いのち”を思い出してもらえたらと思っています」
ここでキーワードになるのが「いただきます」という言葉。このプロジェクトを始めてから小山さんは「いただきます」という言葉に誰よりも重みを感じるようになったと言います。これまで何気なく言っていたいただきますも、今では肉や魚などの、“いのち”に対する敬意、そして生産者、料理を作ってくれる人、運んでくれる人たちへの感謝を表すまで、いただきますを通じて感謝するようになったのだとか。食べるたび、すべての人への感謝を思い起こすことによって自分の慮る力が磨かれていると実感しているのだそう。
「僕は2050年には、慮る力に溢れる社会になっていたらいいなと思います。その第一歩は、まずはいろんなものへの感謝をするところから始められるのではないでしょうか。そしてそれが、人の優しさにつながり、その循環が社会をよくしていくと信じています」
気づきをもたらす「はかり」や「目玉焼き」
続いてEARTH MARTの企画についての紹介もありました。
入館してすぐ、プロローグとしての映像が始まり、来場者にパビリオンのコンセプトが共有されます。扉が開くと、そこには「いのちのフロア」が現れます。
「いのちのフロア」では、私たちの食がどれほどのいのちに支えられているのか体感する仕掛けが繰り広げられています。その一つ、「いのちのはかり」では、さまざまな食品を計りの上に置くと、その食品にまつわる数字が表示されます。例えば「はちみつ」を載せると表示されるのは「5g」。ティースプーン一杯程度の人間のスケールから見るとほんのわずかな量ですが、これは一匹の蜂が一生のうちに集める蜜の量です。何気なく見ているはちみつも、見せ方、出会い方が変われば、同じはちみつを見たとしてもそこから想起する思いは全く異なるものになります。
他にも、卵の消費量世界トップクラスの日本人が生涯で食べる卵の量約2万8千個の卵で作った卵を使った卵のシャンデリアと、その卵を使って作ったと見立てられた目玉焼きが展示されています。数字だけではなく、可視化されることで、より実感しやすくなります。卵だけでもこれだけの量。人間がどれだけのいのちを頼りに生きているのか、想像せずにはいられないでしょう。
展示の後半は「未来のフロア」に続き、ここは、これからの食のあり方が提案されます。中でも、「EARTH FOODS」では、新しいものではなく、あえて日本の昔から伝わる25の食品が展示されています。日本では当たり前の海藻や発酵の文化や、梅干し、あんこなどの食べ物も、海外の人からするとフードテックになる可能性がある。それらが食のより良い未来を切り拓く可能性を持っているかもしれません。そんなポテンシャルを秘めた食材に出会うことができます。
他にも、食を通していのちに想いを馳せるさまざまな仕掛けが用意されています。この一連の流れを通して、慮る力が芽生え、養われ、課題解決のためのアイデアが湧き出してくる社会を目指したいと小山さんは言います。

まずは一歩踏み出してみることから
そして、10月に本番を迎えるプレゼン大会「VISION MASHUP STAGE」に向けて、「皆さんには食に限らず、他者を慮るきっかけになるものを考えてほしいと思います」と小山さん。そして、最後に小山さんが大事にしている“言葉のお守り”を紹介して講義を締めました。
それは、日本初の天気予報。1880年に初めて発表された天気予報は「全国一般風ノ向キハ定リナシ天気ハ変リ易シ但シ雨天勝チ」という文言で、晴れても曇っても、雨が降っても当たるというものでした。
「僕は、これを見たときに元気が出ました。どんなに稚拙でつまらないと思われることも、自分が完成させることができなくても、後世の誰かのヒントや種になれば、それは磨かれていって形になると思います。完璧なものを作ろうとすると苦しくなるかもしれません。でも、完成されていなくても第一歩を踏み出すことが大切だと思います」
質疑応答「小山さんにとっての“幸せ”とは?」
ここからは、講演会で行われた質疑応答をご紹介していきます。
Q.
「いただきます」という言葉が形式的なマナーになっていることについてどう思いますか?
A.
もったいないと思います。視点を変えたら魂が入って言葉に何倍もの価値が出てくる言葉だから。
視点を変えることで考え方が変わる話をもう一つお伝えします。2007年に、首都高速道路の安全キャンペーンの依頼があったんです。交通安全キャンペーンでは、「スピードを出してはいけません」など、何かを禁止する働きかけが一般的ですが、そうではないアプローチを考えていました。
そこで提案したのが、「東京スマートドライバー」というブランド。禁止するのではなく、良い行いを褒める。そうすることで、首都高速を運転する時良いドライバーであろうと心がけ、その結果、首都高速が自分の優しさの発生装置になるんです。つまり世の中は何も変わらなくても、視点が変わることで新たな価値が生まれるということです。
僕は、視点を変えることによって既存のものに新たな価値を作ることが究極の企画だと思います。いたただきますとの話に戻ると、それを単なるマナーと捉えるか、感謝を生むための儀式であると捉えるかで、言葉の価値は自分にとって変わってくると思います。
Q.
想像力を生み出すために必要なものはなんでしょうか?
A.
今一番必要なことは「教養」だと思います。これは、あらゆる立場の視点で物事を考えられる、ということです。自分から見えていることだけが正義ではなく、国民性や教育、習慣の違いなど、違いを知ることが大切です。教養が身につくことで世界の見え方が変わるのではないでしょうか。
Q.
講演の中で「幸せとは気づくもの」とありましたが、小山さんにとっての「幸せ」とはなんですか?
A.
私にとって、「Your Hapiness is My Hapiness」なんです。例えば、今日の講演で皆さんがハッピーになれば嬉しい。これは僕の本能じゃないかなと思います。
僕の理想の職業は天使なんです。冗談ではなく(笑)というのも、何かやって感謝されることに喜びを感じるのではなく、何かやってその人の人生が上手い方向へ進んだときにやったぜ!と思える、そんな幸福感を追い求めています。

講演後には、ワークショップも実施

講演後は、小山さんのお話を聞いてどのような未来を実現したいのかグループに分かれて話し合いました。
VISION MASHUP STAGE登壇者募集中!【5/9エントリー〆切】

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あわわ まちの人事部
- 住所/ 徳島市南末広町 2-95(あわわ)
- 電話/088-654-1114
- 営業時間/平日9:00~18:00
- 定休日/土、日、祝日
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