カフェ・喫茶店テイクアウトコーヒー
2024/02/09 14:30
さあや
【連載】おいしいコーヒーの淹れ方/いかりや珈琲店(徳島市通町)

【連載】おいしいコーヒーの淹れ方/いかりや珈琲店(徳島市通町)

この春、社会人になった私は同時にコーヒーもデビュー。コーヒーを買って飲む機会が増え、ようやく自分好みの味もわかってきた。

しかし豆の挽き方やドリップの仕方などおいしい淹れ方は無知。そこで、徳島で自家焙煎し究極の一杯を目指すスペシャリスト達にお家で楽しめる淹れ方を教わった。

マスターのこだわりを知って、コーヒーをよく知らない人もコーヒーが好きな人も、おいしいコーヒーがある生活をエンジョイしませんか?



ということで今回は『いかりや珈琲店』におじゃましてきた!




徳島の自家焙煎コーヒー店の先駆者


【連載】おいしいコーヒーの淹れ方/いかりや珈琲店(徳島市通町)

自家焙煎をキーワードにご紹介している本連載。この店なしには語れない。

『いかりや珈琲店』は昭和30年(1955)に徳島ではじめて焙煎機を導入した喫茶店。来年で創業70周年を迎える長い歴史をもつ老舗の名店だ。徳島は自家焙煎コーヒーのお店が多いと言われており、そのパイオニア的存在に取材をすることできた。徳島のコーヒーの流れを見てきたお店は一体どんなお店だろう。ワクワクしながら門を叩いた。

【連載】おいしいコーヒーの淹れ方/いかりや珈琲店(徳島市通町)

長いS字のカウンターにレザーチェア。イタリアタイルで彩られた壁や床、独創的で上品なランプなどで装飾された店内は、昭和30年創業の当時にとってはモダンでハイカラだった様子が伺える。この“レトロ”ともいえる雰囲気が、居心地の良さを感じさせてくれる。

カウンターで粛々とコーヒーを淹れるのは3代目の馬場淳さん。初代の孫にあたる。その初代というのが徳島に焙煎機をもたらした人物。徳島ではまだ自分で焙煎をするという文化が浸透していなかったにも関わらず、東京で見たミルクホール(現代でいう喫茶店)に憧れ、焙煎機を購入することに。当時は全ての豆を焙煎し、提供することはできなかったとはいえ、7・8種類の豆は出していたのではとのこと。

【連載】おいしいコーヒーの淹れ方/いかりや珈琲店(徳島市通町)

店の入り口は2つあり、席は奥へと続く。

2代目は3代目のお母さんであり今も現役で店頭に立っている。子どものころは焙煎豆があがると、当時は冷却機能が備わっていなかったため、うちわで扇ぐ手伝いをしていたという。

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凛とした立ち振る舞いでドリップする淳さん。話をすればするほど気さくで謙虚な方だとわかる。

そして3代目・淳さんは23歳にして焙煎を教わり、お店を手伝うように。初代より手回しの焙煎機で教えてもらったと当時を振り返る。

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8kg釜の[LUCKY]。

今年で焙煎歴37年になるが、自分で納得ができるパターンができたのはここ10年くらいという。難しいという一言では表しきれないほど奥が深い。

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今では20種類もの豆を販売している。なかでも[Aブレンド][Bブレンド]は長年配合を変えずに提供。浅煎りから深煎りまで豊富にそろうが、「ダラダラ飲むコーヒーが好きだ」というマスターは冷めてもおいしい深いコーヒー作りが得意だそう。

淳さんはこれまで約40年間、ここのカウンターからコーヒーを通して徳島や時代の移り変わりを目にしてきた。

その昔、コーヒーは少しドロッとした苦いコーヒーが好まれていて、お砂糖やフレッシュは必須。
お客さんは一見さん以外は入り辛く、市役所、新聞社、郵便局職員の男性客が多くを占めていた。出勤前にタバコを片手に新聞を読みコーヒーを飲む。席は指定席ではないものの、いつものあの人の席、空間があったそうだ。支払いはコーヒーチケット(先払い回数券)を使い、潔く男性が奢るという光景が広がっていたそう。

そんな時代より“カフェブーム”や“働き方の変化”を経て、現在は女性のお客さんが8割を占め、コーヒーはブラックで飲む人が多くなった。

コーヒーやお客さんなど、約40年で大きく時代は変わったが、淳さんは変化に合わせてメニュー構成や見せ方を模索してきた。しかし、店内の内装はほとんど変えていないという。私が今座ってる席はどんなお客さんの指定席だったのかな。そんなことを考えながら少し昔の時代に憧れ、想いをはせる。

【連載】おいしいコーヒーの淹れ方/いかりや珈琲店(徳島市通町)

取材時には女子大学生がコーヒーゼリーを注文し、会話を楽しんでいた。[コーヒーゼリー](660円)はこの店の看板メニューの一つ。ほろ苦いコーヒーゼリーの上に、甘さ控えめのアイスクリームがたっぷりと盛られている。一度見たら忘れられないインパクトが強い一品だ。

淳さんは「若い人にもコーヒーを好きになってもらいたい。味の違いを知って通ぶってほしいな」と笑う。コーヒーの魅力や楽しみ方を存分に体感しているマスターの言葉が心に沁みる。私も通ぶってみよう。

おいしいコーヒーの淹れ方


【連載】おいしいコーヒーの淹れ方/いかりや珈琲店(徳島市通町)

『いかりや珈琲店』は創業当時からお手製のネルドリップでコーヒーを淹れる。なんと、阿波踊りの足袋などにも使われる布・フランネル(毛織物)を自ら裁断補正して使用するオリジナルネルドリップだ。この一手間がより徳島を感じられ、コクが出やすく、深い味わいの一杯になる。そんなおいしいコーヒーの淹れ方を教えてもらった。

【連載】おいしいコーヒーの淹れ方/いかりや珈琲店(徳島市通町)

[Bブレンド](1350円/200g)

【連載】おいしいコーヒーの淹れ方/いかりや珈琲店(徳島市通町)
まず、ペーパードリップの時は紙臭さを取るためにペーパーにお湯をかけます。サーバーやカップもお湯を浸して温めておくと温度変化が少なく、おいしいコーヒーになります。

ネルドリップの時はコーヒー1杯に対し豆は16〜18g使い、少し粗めに挽きます。使うお湯は90℃前後にし、ネルの縁に当てると豆を介さず落ちてしまうので注意しながら真ん中に円を描くように入れて蒸らします。


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お湯の適温の見極めはお湯を入れている時に立つ泡。ガスが出て白くなり細かいほどいい状態です。気泡が大きいと温度が高い証拠で、泡が上がってこなければ、お湯の温度が低いか豆が湿気を含んでいるということです。
真ん中に細かい粒子がぷくぷくとでてきたら温度は適温で新鮮な豆だと言えます。


【連載】おいしいコーヒーの淹れ方/いかりや珈琲店(徳島市通町)
最初の3回くらいで旨みが抽出されるので後半は量を調整するように淹れます。最後の一滴まで落とさず、まだ残っていても淹れるのをやめ、おいしい部分だけをいいとこどりするようにしてください。クリアな後味の良いコーヒーができますよ。
その後沸騰しない程度に火を通して温めてやると対流が生まれ良い味わいになります。


【連載】おいしいコーヒーの淹れ方/いかりや珈琲店(徳島市通町)

深い味わいでありながらクセがなくあっさりと飲みやすい一杯。徳島のコーヒー文化を先導し、ネルドリップで淹れられたコーヒー。飲むと徳島への愛がさらに大きくなる感情を覚え、胸がいっぱいになった。

豆情報


・いかりやAブレンド(1,296円/200g)
・よしこのブレンド(1,512円/200g)
・匠ブレンド(1,404円/200g)
・有機栽培ブレンド(1,490円/200g)
・クラシックブレンド(1,512円/200g)
・バリ神山(しんざん)ハニー(1,350円/200g)
・コロンビア(1,296円/200g)
・ブラジル(1,296円/200g)
・マンデリン(1,296円/200g)
・キリマンジャロ(1,242円/200g)など


マスターにとってコーヒーとは


「慌ただしい朝も、午後のひとときも、一杯のコーヒーで心が落ち着く。香り豊かなコーヒーは“贅沢な時間”を与えてくれる特別な飲み物」と淳さん。


ここ10年ほどは、マルシェやイベントに出店する機会が増え横のつながりや刺激が多くなったという。取材中には何度も「まだまだ勉強しないと」という言葉を繰り返した。

コーヒーに携わって40年ほどが経つが、ずっと謙虚でコーヒーへの熱が冷めることはない。創業より69年、今もたくさんのお客さんが集うわけだ。「コーヒーがおいしくなるならなんでもする」。向上心に溢れたマスターの今日のコーヒーは昨日よりもおいしく、明日は今日よりもおいしい。


いかりや珈琲店

  • 住所/徳島市通町 1-12
  • 電話/088-623-0808
  • 営業時間/ 8:00~18:30
    備考/土曜は9:00~17:00
  • 定休日/日、祝日
  • 駐車場/なし
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